月経前症候群(PMS)とカルシウム

今回は月経前症候群(Premenstrual Syndrome 以下PMS)とカルシウムの関係について、お話しましょう。

PMSは黄体期に相当する月経前3~10日に精神的又は身体的な種々の症状が起こり、月経になるとそれが消失し、月経のある女性の半数近くが経験すると言われているものです。
精神的症状としては、イライラ、怒りっぽくなる、憂鬱、不安感などが、身体的症状としては、のぼせ、下腹部膨満感、下腹痛、腰痛、頭痛、乳房痛等があり、このサイトをご覧いただいている人の中にも心当たりの方がいらっしゃるのではないでしょうか?症状の度合いは、症状が現れてもそれほど気にならない人もいれば、 逆に日常生活でさえも困難になってしまう人もおり、個人差が大きいです。

原因はまだ明らかになっておりませんが、上記のようなPMSの症状緩和にカルシウム摂取が有効であると言われています。 これは、PMSの症状が血液中のカルシウム濃度が低下したときに起こる症状に似ていて、ホルモンを生産する内分泌系に影響を与えるからです。アメリカで実施された1日当り1,000mgのカルシウムを3ヶ月間摂取するという実験でPMSの症状が軽減されたという臨床試験結果が出ています。

残念ながら日本では、18~49歳の女性のカルシウム摂取量が、まだ1日当り500mgを満たしていないのが現状です。カルシウム摂取が不足気味の方は、サプリメントや栄養補助食品、カルシウム強化飲料などから摂取するのも良いでしょう。まずは、厚生労働省で定められているカルシウムの食事摂取目標量である1日当り600~700mgをめざしてカルシウムを摂ってみませんか?

 

 

参考文献:
Thys-Jacobs S : Micronutrients and the Premenstrual Syndrome: The Case for Calcium Journal of the American College of Nutrition, Vol. 19, No. 2, 220-227 (2000)
末田香里・村木仁美・八木亜矢子・渡邊章子: カルシウム補給が月経前緊張症に及ぼす影響: 名古屋女子大学紀要 第51号 (家・自) 45~51 (2005)
福岡秀興: 月経前緊張症に対する牛乳治療効果の検討: 平成17年度牛乳栄養学術研究会委託研究報告書 社団法人 日本酪農乳業協会 (2005)
平成17年 国民健康・栄養調査報告書
日本人の食事摂取基準(2010年版)概要